「ゲゲゲの家計簿」 時代の臭いや手触り


「ゲゲゲの家計簿」がビックコミックに連載され始めたときは、それほど興味がわかなかった。だって同じような自伝的な題材は今までいくつかの作品に描かれていたし、「ゲゲゲの女房」と重なる部分だって多いだろうし、ね。たしかに89歳で雑誌に新連載開始、と言うのはすごいとは思うけれど。

実際、連載が始まった作品を読み始めても若き日の水木しげるがほんとうにただ淡々と描かれているだけのような気がして最初は、まあこんなものか、なんて思っていたのだ。

でもしばらく見ているうちにしだいに、これなかなか面白い、と思うようになった。

ただ淡々と流れていくだけのような描写の裏にその時代の臭いや手触りが伝わってくる。そしてその時代の流れの中で普通に生きていた水木しげるの姿が浮かび上がる。

家計簿に書き込まれていたのは何からいくら収入があったか、何にいくら支出したかのただそれだけの記述。短い数文字と数字。そこから浮かび上がる水木の生活と悩みや喜び、怒りや悲しみ。その時代のに普通に生きていた普通の一人の日本人としての水木しげる。
とかく自分の若いときの苦労を何か特別なことのように語りたがる(書きたがる)人が多いように思うが、水木はただ淡々と普通に生きていた自分を描く。それ故にそこに生き生きとした情景が浮かび上がり、読者の心を揺らすのだ。

「ゲゲゲの女房」にあったエピソードも水木の視線で描かれるとまた違ったイメージになりそれもまた面白い。

私にとって最近では一番続きが待ち遠しくなった作品だ。


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